FXの買い(ロング)は通貨ペアのレートが上がると、売り(ショート)は下がると損益がプラスになる取引で、どちらから入っても決済(反対売買)をして初めて損益が確定します。決済するまでの損益は「含み損益」として動き続けるため、注文画面を見る前に、新規注文から決済までの流れと損益の計算方法を確認しておくと安心です。
この記事は特定の通貨ペアや売買のタイミングをすすめるものではなく、仕組みを理解するための解説で、損益の例はすべて架空の数字です。
買い(ロング)と売り(ショート)の違いは損益が出る方向
買いと売りの違いは、損益がプラスになる値動きの向きが逆であることです。どちらが有利ということではなく、最初にどちらの注文を出すかで、利益になる方向と損失になる方向が入れ替わります。
買いから入る(ロング)
買い(ロング)は、通貨ペアのレートが上がると利益、下がると損失になる取引です。たとえば米ドル/円の買いは、米ドルを買って円を売る取引にあたり、米ドルの価値が円に対して上がったときにプラスになります。買って保有している状態を「買いポジション(ロングポジション)」と呼びます。
売りから入る(ショート)
売り(ショート)は、通貨ペアのレートが下がると利益、上がると損失になる取引です。同じ米ドル/円なら、米ドルを売って円を買う取引にあたり、米ドルの価値が円に対して下がったときにプラスになります。売って保有している状態は「売りポジション(ショートポジション)」と呼びます。
売りから始められるのは差額だけを精算するため
FXは通貨の現物をやり取りせず、買付けの対価と売付けの対価の差額をやり取りして決済する「差金決済」の仕組みです。そのため、買いからでも売りからでも取引を始められます。ただし、どちらから入る場合も証拠金の差し入れが必要です。仕組みの詳細は金融先物取引業協会の「取引スキーム」で確認できます。
| 項目 | 買い(ロング) | 売り(ショート) |
|---|---|---|
| 最初の注文 | 買い注文 | 売り注文 |
| ポジションの呼び方 | 買いポジション | 売りポジション |
| 利益になる値動き | レートが上がる | レートが下がる |
| 損失になる値動き | レートが下がる | レートが上がる |
| 決済の注文 | 売り注文 | 買い注文 |
表のとおり、決済では最初の注文と反対の売買を行います。次の章で、この流れを順番に見ていきます。
新規注文から決済(反対売買)までの流れ
取引は「新規注文でポジションを持つ」「保有する」「反対売買で決済する」の3段階で進みます。買いでも売りでも、この順番は同じです。
- 新規注文で、買いか売りか、通貨ペア、数量を決めて注文する
- 注文が成立(約定)して、ポジションを持つ
- 保有している間、レートの変動に合わせて含み損益が変わる
- 最初の注文と反対の売買(反対売買)で決済する
- 決済した時点で、損益が確定する
新規注文でポジションを持つ
決済していない取引の残りを「ポジション(建玉)」といい、ポジションを持つことを「ポジションを建てる」と表現します。新規注文は、このポジションを建てるための最初の注文です。数量は「1万通貨」のように通貨単位で指定し、取引単位は業者や取引ツールで異なります。詳しくはFXの1ロットは何通貨?業者・MT4/MT5で違う取引単位とpips損益の計算例も参考にしてください。
決済は「反対売買」で行う
決済とは、持っているポジションと逆の売買をしてポジションを解消することです。買いポジションは売り注文で、売りポジションは買い注文で決済します。ポジションが残っていない状態は「スクエア(ノーポジション)」と呼ばれます。決済の注文には成行・指値・逆指値などの方法があり、違いは成行・指値・逆指値の違いとは?約定の仕組みと損切り注文の注意点で整理しています。
決済せずに持ち越す場合
決済しないまま持ち越すと、ポジションは残り続けます。異なる通貨を交換する際には金利差の調整分である「スワップポイント」が生じ、受け取る場合も支払う場合もあります。持ち越した場合の損益には、値動きによる損益に加えて、スワップポイントの受け払いも別に加わります。
含み損益と確定損益の違い
含み損益は「いま決済したと仮定した場合の損益」で、決済前は値動きに合わせて変わり続けます。確定損益は、決済によって実際に確定した損益です。
含み損益は決済前の評価額
含み益・含み損は、保有しているポジションを現在のレートで決済したと仮定したときの損益です。業者の画面では「評価損益」などの名称で表示されることもあり、呼び方は業者ごとに異なる場合があります。為替レートは常に動いているため、保有中は含み損益も常に変わります。
確定損益は決済した時点で固定される
確定損益は、反対売買で決済した時点の損益です。いったん決済すると、その後にレートが動いても確定した損益は変わりません。
| 項目 | 含み損益 | 確定損益 |
|---|---|---|
| 対象 | 決済していないポジション | 決済したポジション |
| 金額の動き | レートに合わせて変わる | 決済後は変わらない |
| 意味 | いま決済したと仮定した場合の損益 | 実際に確定した損益 |
保有中に含み損益が変わる例
架空の数字で確認します。米ドル/円を1万通貨、150.00円で買ったとします。レートが150.30円になると、30pips上がっているため含み益は3,000円です。その後に149.80円まで下がると、20pips下がっているため含み損は2,000円になります。
ここで149.80円のまま決済すると、確定損益はマイナス2,000円です。決済しない間は損失が確定しないだけで、含み損そのものが消えるわけではなく、レートが戻る保証もありません。
架空の数字で買いと売りの損益を計算する
損益は「値動きの幅×数量」で計算でき、買いと売りでは値動きの引き算の向きだけが逆になります。ここでは米ドル/円のように、円で損益が出る通貨ペアを例にします。
損益の計算式
- 買いの損益:(決済レート-新規レート)×数量
- 売りの損益:(新規レート-決済レート)×数量
米ドル/円では1pipsが0.01円にあたるため、1万通貨なら1pipsあたり100円です。円を含まない通貨ペアでは損益が決済通貨建てで出るため、円に直すには換算が必要です。以下の例では、スプレッド・スワップポイント・手数料は含めていません。
買い(ロング)の計算例
新規レート150.00円で、米ドル/円を1万通貨買った場合の架空の例です。
| 決済レート | 値動き | 損益 |
|---|---|---|
| 150.50円 | 0.50円上昇(50pips) | プラス5,000円 |
| 149.60円 | 0.40円下落(40pips) | マイナス4,000円 |
売り(ショート)の計算例
新規レート150.00円で、米ドル/円を1万通貨売った場合の架空の例です。
| 決済レート | 値動き | 損益 |
|---|---|---|
| 149.50円 | 0.50円下落(50pips) | プラス5,000円 |
| 150.40円 | 0.40円上昇(40pips) | マイナス4,000円 |
同じ値動きでも、買いと売りで損益の符号が入れ替わることが分かります。自分で数字を入れて確かめたいときは、FX利益損失計算機で、売買の向き、数量、新規と決済のレートを入れて損益を確認できます。入力項目の詳細は計算機のページでご確認ください。
売りでも買いでも共通する注意点とリスク
売りと買いのどちらから入っても、レートが予想と逆に動けば損失になり、損失額が証拠金を超える場合もあります。金融庁は、FXを「証拠金以上の損失が生じるおそれがあり、元本も利益も保証されない取引」と案内しています。
⚠️ 損失の側も先に計算しておきましょう
売りでも買いでも、レートが予想と逆に動けば損失になります。FXは元本も利益も保証されない取引です。
レバレッジで損益が大きくなる
FXは証拠金の何倍もの取引ができるため、少額の資金でも損益の幅が大きくなります。金融庁の案内では、個人の店頭FX取引は取引金額の4%以上の証拠金を差し入れて維持する必要があり、レバレッジ25倍以下に相当するとされています。ただし、この上限まで使うことをすすめるものではありません。
ロスカットが働いても損失が証拠金を超えることがある
評価損があらかじめ決めた水準に達すると、業者が強制的に決済する「ロスカット」の仕組みがあります。しかし、相場が急変したときはロスカットが十分に働かず、証拠金を上回る損失が生じることがあります。
決済前の含み損でも、強制決済の対象になる点に注意してください。リスクの全体像は、金融庁のFXに関する注意情報と、金融先物取引業協会のFX取引に係る主なリスクで確認できます。
計算例に含めていないコスト
前の章の計算例には、売値と買値の差であるスプレッド、スワップポイントの受け払い、手数料を含めていません。実際の損益は、これらによって計算例より増えたり減ったりします。取引前に、業者の説明書面や取引条件で確認してください。
注文画面を見る前に確認したいこと
注文する前に、買いか売りか、数量、損失になる側の金額を自分の言葉で説明できる状態にしておくことが大切です。
- いまの注文が、買い(ロング)か売り(ショート)かを確認できている
- 数量が何通貨で、1pipsあたり何円の損益になるかを計算している
- 反対側(損失になる側)にレートが動いたときの金額を、先に計算している
- 決済の注文方法(成行・指値・逆指値など)を理解している
- スプレッド、スワップポイント、手数料など、計算例に含まれない費用を確認している
- 取引する業者が、金融商品取引法の登録を受けた業者かを確認している
利益の側だけでなく、損失の側を先に計算しておくと、想定外の金額に驚きにくくなります。方向を当てるよりも、仕組みと金額を理解したうえで判断することが重要です。
よくある質問(FAQ)
買いと売りでは、どちらから入るほうが有利ですか?
どちらが有利ということはなく、利益になる値動きの向きが逆なだけです。買いはレートの上昇、売りはレートの下降で利益になり、逆に動けばどちらも損失になります。この記事は売買の方向をすすめるものではありません。
通貨を持っていなくても、売りから入れるのですか?
FXは通貨の現物を受け渡さず、差額だけを精算する差金決済の仕組みのため、売りからでも買いからでも取引を始められます。ただし、証拠金の差し入れなど業者ごとの取引条件があるため、利用する業者の説明書面で確認してください。
決済しなければ、含み損は損失として確定しませんか?
決済するまでは確定損益にはなりませんが、含み損が消えるわけではありません。評価損が業者の定めた水準に達するとロスカットで強制的に決済される場合があり、その時点で損失が確定します。急変時には証拠金を超える損失が生じることもあります。
円を含まない通貨ペアでも、損益の計算式は同じですか?
考え方は同じで、買いは(決済レート-新規レート)×数量、売りは(新規レート-決済レート)×数量です。ただし、損益は決済通貨建てで出るため、円で把握するには円への換算が必要です。
まとめ
買い(ロング)はレートの上昇、売り(ショート)はレートの下降で損益がプラスになり、どちらから入っても反対売買で決済して初めて損益が確定します。決済前の損益は含み損益として動き続けます。
- 買いと売り:損益が出る値動きの向きが逆で、決済では最初の注文と反対の売買を行う
- 売りから入れる理由:現物を受け渡さず、差額だけを精算する差金決済のため
- 含み損益と確定損益:決済前の評価額が含み損益、決済で確定した損益が確定損益
- 損益の計算:買いは(決済レート-新規レート)×数量、売りは(新規レート-決済レート)×数量
- 注意点:逆に動けば損失になり、証拠金を超える損失が生じることもある
次は、計算機で架空の数字を入れて、利益の側だけでなく損失の側の金額も確認してみてください。









