2026年10月29日・30日の日銀金融政策決定会合では、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促す方針が賛成8反対1で決まり、金利水準は9月会合の利上げ後と同じ1.25%程度のままでした。あわせて、ETF(上場投資信託)の売却ペースを2027年1月から年間8,600億円程度(簿価ベース)へ見直すことが全員一致で決まっています。
この記事では日本銀行の公表文で確認できる内容だけを整理し、為替やスワップの見方と、会合後に資金管理で確認したい点を中立的に説明します。
10月会合の結論:政策金利は1.25%程度のまま、決定は2つ
10月会合で金利の誘導目標は変わっていません。決まったのは、金融市場調節方針(金利の方針)と、ETFの売却ペースの見直しの2つです。
決定事項は金利方針とETF売却ペースの2つ
日本銀行が公表した決定内容を表にまとめます。金融市場調節方針は「次回金融政策決定会合までの方針」として決められたものです。
| 項目 | 決定内容 | 賛否 |
|---|---|---|
| 金融市場調節方針 | 無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促す | 賛成8反対1 |
| ETFの売却ペースの見直し | 2027年1月から、年間の売却ペースを8,600億円程度(簿価ベース)とする | 全員一致 |
無担保コールレート(オーバーナイト物)は、金融機関どうしが翌日までの資金を貸し借りするときの金利で、一般に政策金利として扱われます。1.25%程度という水準は、9月会合の決定と同じです。9月の経緯は日銀2026年9月会合の利上げ決定とドル円・スワップへの影響で整理しているので、先に確認したい方は参考にしてください。
会合の日程と公表資料
公表文に記載された日程は次のとおりです。原文は日本銀行の「当面の金融政策運営について」(2026年10月30日)で確認できます。
- 会合の開催時間:10月29日(木)14:00~16:00、10月30日(金)9:00~11:55
- 10月30日(金)12:02に公表:「当面の金融政策運営について」と「経済・物価情勢の展望(基本的見解)」
- 公表予定とされた資料:展望レポートの背景説明を含む全文は11月2日(月)14:00、主な意見は11月10日(火)8:50、議事要旨は12月23日(水)8:50
賛成8反対1の中身:反対した高田委員は1.5%程度を提案
反対した委員は高田委員1人で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.5%程度で推移するよう促す議案を提出しました。この議案は反対多数で否決されています。
賛成した委員と反対した委員
公表文では、賛成は植田委員、氷見野委員、内田委員、田村委員、小枝委員、増委員、浅田委員、佐藤委員の8人、反対は高田委員の1人と示されています。
反対議案の内容
公表文によると、高田委員は、基調的な物価上昇率が「物価安定の目標」に達した中で、機動的な対応が可能となる中立金利に近づけるペースを速める新たな局面に入ったという考えから、1.5%程度とする議案を出しました。多数の委員は、この議案に賛成しなかったことになります。
反対票の読み方と確認先
反対票は、金利をどのペースで動かすかについて委員の間に意見の違いがあったことを示す事実です。ただし、この1票から次回会合の結論を決めつけることはできません。各委員の考え方は、11月10日に公表予定の「主な意見」や、12月23日に公表予定の議事要旨で確認するのが確実です。
ETF売却ペースの見直し:年間3,300億円程度から8,600億円程度へ
日本銀行は、保有するETFの売却ペースを、2027年1月から年間8,600億円程度(簿価ベース)に引き上げます。これまでの年間3,300億円程度(簿価ベース)からの見直しで、全員一致の決定です。
何がどう変わったのか
公表文の数字を、従来と見直し後で並べます。
| 項目 | 従来の決定(2025年9月) | 今回の見直し後 |
|---|---|---|
| 年間の売却ペース(簿価ベース) | 3,300億円程度 | 8,600億円程度 |
| 市場全体の売買代金に占める売却割合 | 0.05%程度(当時) | 0.1%程度 |
| 実施時期 | 2026年1月から売却を開始 | 2027年1月から |
簿価ベースとは、日銀が買い入れた時点の価格で数えた金額のことです。公表文の脚注には、2026年1月から9月までの東証プライム市場全体の売買代金と、同じ期間に日銀が売却したETFの時価と簿価の比率を使って時価に換算すると、年間2兆4,600億円程度になると書かれています。
公表文の脚注で確認できる条件
- 実施時期:2027年1月から実施する
- 一時的な調整・停止:市場等の状況に応じて、年間の売却ペースの範囲内で、売却額の一時的な調整や停止を行うことができる(従来どおり)
- J-REIT:売却ペースは引き続き年間50億円程度(簿価ベース)
- 時価換算:上記の計算方法で年間2兆4,600億円程度
為替との関係で確認できること
公表文は、2026年1月から始めたETFの売却について、市場に大きな影響を与えることなく円滑に進めているとし、株式市場の売買代金が拡大していることも踏まえて売却割合を見直した、という趣旨で説明しています。
一方で、この見直しが為替レートにどう影響するかについて、公表文は何も述べていません。この記事でも、円高・円安のどちらに働くかは推測しません。ETFの売却ペースは金利方針とは別の決定である、という点だけを押さえておけば十分です。
同日公表の展望レポート(基本的見解):物価見通しと金融政策運営の記述
10月30日には、決定内容とあわせて「経済・物価情勢の展望(基本的見解)」も公表されました。消費者物価の見通しが前回より一部上振れ、今後も経済・物価・金融情勢に応じて政策金利を引き上げていく考えが示されています。
政策委員の大勢見通し
日本銀行の経済・物価情勢の展望(2026年10月)【基本的見解】に載っている、政策委員の大勢見通し(対前年度比、%)を抜粋します。かっこ内は政策委員見通しの中央値です。
| 年度 | 実質GDP | 消費者物価指数(除く生鮮食品) | 消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー) |
|---|---|---|---|
| 2026年度 | +0.7~+0.8(+0.7) | +2.4~+2.6(+2.5) | +2.4~+2.5(+2.4) |
| 2027年度 | +0.6~+0.8(+0.7) | +2.4~+2.7(+2.6) | +2.4~+2.7(+2.7) |
| 2028年度 | +0.7~+0.9(+0.8) | +2.0~+2.1(+2.0) | +2.2~+2.4(+2.3) |
大勢見通しは、各委員が最も可能性が高いと考える数値から最大値と最小値を1個ずつ除いた幅で、予測誤差を踏まえた上限・下限を意味しません。また、今回の見通しには、国会で審議中の飲食料品消費税率の臨時的な引き下げなどは織り込まれていません。前回の7月時点と比べると、消費者物価(除く生鮮食品)の2027年度は幾分上振れたと説明されています。
金融政策運営についての記述
基本的見解では、基調的な物価上昇率が2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準となり、現在の金融環境が緩和的であることを踏まえると、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている、と書かれています。
そのうえで、調整のタイミングやペースは、中東情勢、AI関連需要の拡大、為替相場の変動などの影響を含め、中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら検討していく方針です。具体的な時期や幅を示した記述ではないため、次の動きを読み取ろうとしすぎないことが大切です。
リスク要因として挙げられた為替相場の変動
基本的見解は、経済・物価のリスク要因の一つに為替相場の変動を挙げています。円安の進行は、グローバル企業の収益などにプラスの影響を及ぼす一方、輸入物価の上昇などを通じて家計の実質所得を下押しし、中小企業などの収益にマイナスに作用する面があると整理されています。
また、夏場以降は為替相場がやや振れの大きな展開となっており、その影響を十分に注視する必要があるとされています。これは日銀による経済・物価への影響の整理であり、為替の今後の水準を示すものではありません。
会合結果をスワップや為替の動きにどう結びつけるか:方向を決めつけない見方
金利方針が維持されたという事実だけで、為替レートやスワップポイントの方向を言い切ることはできません。会合の結果は、材料の一つとして受け止めるのが安全です。
政策金利とスワップポイントの関係
スワップポイントは、取引する2つの通貨の金利差を背景に、ポジションを持ち越したときに受け取りまたは支払いが生じる仕組みです。ただし、実際の付与額は業者ごとに設定され、日々変わります。政策金利が同じ水準のままでも、市場の金利や業者の設定によって数字は動きます。仕組みの詳細は、スワップポイントは日米金利差で変わる?利上げ局面の仕組みと注意点で確認できます。
会合前後の値動きとスプレッド
金融政策の発表前後は、値動きが大きくなったり、スプレッド(買値と売値の差)が広がったりすることがあります。このとき、注文が想定と違うレートで約定するおそれもあるため、ポジションを持つ前に最大でいくらの損失まで許容できるかを決めておきます。
ご注意:FX取引は価格変動により損失が生じるおそれがあります。この記事は日本銀行の公表内容の整理であり、特定の通貨ペアや売買のタイミングを勧めるものではありません。取引の判断はご自身の責任で行い、最新の情報は日本銀行などの公式な発表でご確認ください。
結果だけで判断しない理由
為替レートの反応は、会合の結果そのものより、市場の事前の見方との差や、海外の中央銀行の動き、地政学的なニュースなど複数の要因で変わります。市場の事前の見方は公表文からは分かりません。そのため、結果を見てから方向を想像して取引量を増やすより、想定外の動きに耐えられるかを数字で確かめる方が、リスク管理として確実です。
会合後から次回12月会合までに資金管理で確認すること
会合後に確認したいのは、許容損失、ロット、証拠金維持率の3点です。方向の予想ではなく、動いたときに口座がどうなるかを計算しておきます。
会合後に口座で確認する項目
- 1回の取引で許容できる損失額(円)を決め直したか
- 持ち越しているポジションのロット(取引数量)は、許容損失の範囲に収まっているか
- 証拠金維持率に、値動きに耐えられる余裕があるか
- 取引する業者のスワップポイントとスプレッドの最新の表示を確認したか
- 次の重要イベントの日程を確認し、その前後にポジションを持ち越すかを決めたか
数字で確認する例(仮定の計算)
次の例は、考え方を示すための仮定です。USD/JPYのレートを150円、取引数量を1万通貨、必要証拠金を取引金額の4%(レバレッジ25倍)、有効証拠金を30万円と仮定し、買いポジションが1円・3円・5円逆行した場合の証拠金維持率を計算します。為替の見通しを示すものではありません。
| 逆行幅 | 評価損 | 有効証拠金 | 証拠金維持率 |
|---|---|---|---|
| 0円 | 0円 | 300,000円 | 500% |
| 1円 | 10,000円 | 290,000円 | 約483% |
| 3円 | 30,000円 | 270,000円 | 450% |
| 5円 | 50,000円 | 250,000円 | 約417% |
必要証拠金は、150円×1万通貨=150万円の4%で6万円です。有効証拠金を必要証拠金で割ったものが証拠金維持率になります。この例では計算を簡単にするため、必要証拠金は逆行幅にかかわらず6万円のままとしています。実際の必要証拠金やロスカットの水準は業者ごとに異なるため、自分の口座の数字で確かめてください。イベントが重なる週の許容損失とロットの決め方は、FOMC・日銀会合が重なる週の資金管理で詳しく整理しています。
次回会合の日程
日本銀行の金融政策決定会合の日程では、次回の会合は2026年12月17日(木)・18日(金)で、総裁の定例記者会見は12月18日(金)です。同じ日程表では、12月会合は経済・物価情勢の展望の公表がない会合として示されています。会合の前に、持ち越すポジションの量と許容損失をもう一度確認しておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
2026年10月の日銀会合で、政策金利は上がりましたか?
上がっていません。無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促す方針が、賛成8反対1で決まりました。9月会合の利上げ後と同じ水準です。
反対した委員は何を主張しましたか?
高田委員が反対しました。無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.5%程度で推移するよう促す議案を提出しましたが、反対多数で否決されています。
ETFの売却ペースの見直しは、いつから適用されますか?
2027年1月からです。年間の売却ペースは8,600億円程度(簿価ベース)になります。市場等の状況に応じて、年間の売却ペースの範囲内で売却額を一時的に調整したり停止したりできる点は、従来どおりです。
ETFの売却ペースの見直しで、ドル円はどう動きますか?
公表文からは分かりません。日本銀行の公表文は、為替レートへの影響には触れていません。この記事でも、円高・円安のどちらに動くかは推測していません。
次の日銀の金融政策決定会合はいつですか?
2026年12月17日(木)・18日(金)です。総裁の定例記者会見は12月18日(金)に予定されています。日程は日本銀行のサイトで変更がないか確認してください。
まとめ
2026年10月の日銀会合では、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促す方針が賛成8反対1で決まり、ETFの売却ペースは2027年1月から年間8,600億円程度(簿価ベース)へ見直されました。
- 金利方針:1.25%程度のまま。反対は高田委員で、1.5%程度とする議案は否決された
- ETF売却:従来の年間3,300億円程度から8,600億円程度へ。時価換算では年間2兆4,600億円程度。J-REITは年間50億円程度のまま
- 為替への影響:公表文は為替への影響に触れておらず、方向は決めつけない
- 次回会合:2026年12月17日・18日
会合後は、許容損失、ロット、証拠金維持率を数字で確認し、次回会合の前に持ち越すポジションの量をもう一度見直しておきましょう。









