ATRを使った損切り幅の決め方は、「最近の平均的な値動きの幅(ATR)を確認し、その一定倍を損切り幅の目安にする」という考え方です。損切り幅が決まったら、許容損失額 ÷(損切り幅pips × 1pipsの価値)で取引数量(ロット)を計算します。順番は、先にボラティリティ計算機でATRを確認し、次にポジションサイズ計算機でロットを出す流れです。ただしATRは過去の値動きの平均であり、将来の値動きや損切りの有効性を保証するものではありません。
- ATRを損切り幅の目安に使うときの考え方と、倍率の決め方で確認したいこと
- 損切り幅と許容損失額からロットを計算する式と、架空の計算例
- ボラティリティ計算機とポジションサイズ計算機を使う具体的な順番
ATRを損切り幅の目安にするとはどういうことか
ATRを損切り幅の目安にするとは、「何pipsで損切りするか」を固定の数字ではなく、最近の相場の動きの大きさに合わせて決めるということです。
ATRが示すのは「方向」ではなく「値動きの幅」
ATR(Average True Range)は、一定期間の値動きの幅(True Range)を平均した指標です。J. Welles Wilder Jr. が1978年の著書『New Concepts in Technical Trading Systems』で紹介したもので、MetaTrader 5の公式ヘルプでも相場のボラティリティを測る指標として説明されています。
ATRは上がるか下がるかという方向を示すものではなく、「最近はどのくらいの幅で動いているか」を示す値です。この記事では、ATRを売買の判断ではなく、損切り幅とロットを決めるための材料としてだけ扱います。True Rangeの求め方や平滑化の計算方法は、FXボラティリティ計算機|ヒストリカル・ボラティリティとATR・想定変動幅で説明しています。
固定pipsの損切りとの違い
「いつも20pipsで損切りする」のような固定pipsの決め方は分かりやすい反面、相場の動きが大きい時期も小さい時期も同じ幅になります。ATRを目安にすると、値動きが大きい時期は損切り幅が広く、小さい時期は狭くなります。
| 決め方 | 損切り幅の決まり方 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 固定pips | 相場の状況にかかわらず同じ幅 | 値動きの大小が損切り幅に反映されない |
| ATRの一定倍 | 最近の平均的な値動きに合わせて幅が変わる | 幅が変わる分、ロットも毎回計算し直す必要がある |
どちらが優れているという話ではありません。ATRを目安にする場合は、損切り幅が毎回変わるため、許容損失額を一定に保つにはロットの再計算が欠かせない点を押さえておきましょう。
損切り幅を「ATRの何倍」にするかの考え方
ATRの何倍を損切り幅にするかに、決まった正解はありません。倍率は、自分の取引ルールと検証結果をもとに決め、記録を見ながら見直すものです。
倍率によって損切り幅とロットの関係が変わる
倍率を小さくすると損切り幅が狭くなり、同じ許容損失額でもロットは大きくなります。倍率を大きくすると損切り幅が広くなり、ロットは小さくなります。どの倍率でも、損切りにかかったときの損失額(許容損失額)は計算上ほぼ同じになるように調整するのが、この方法の基本です。
このページの計算例では倍率を「1.5倍」としていますが、これは計算の流れを示すための架空の条件です。1.5倍が適切だという意味ではありません。
倍率を決めるときに確認したいこと
- 自分の取引ルールで、損切り幅をどのような根拠で置いているか
- 過去の記録で、損切り幅と実際の値動きの関係がどうだったか
- 倍率を変えたときに、ロットと必要証拠金がどう変わるか
- 検証した期間・条件と、その結果が将来も同じになるとは限らないこと
ATRを見る時間足をそろえる
ATRは、どの時間足のデータで計算するかによって大きさが変わります。当サイトのボラティリティ計算機は日足のOHLC(始値・高値・安値・終値)を貼り付けて計算する仕組みで、ATRの期間は14日です。自分が判断に使う時間足と、ATRを計算したデータの時間足がずれていないかを確認してから、倍率を考えましょう。
損切り幅と許容損失額からロットを計算する方法
損切り幅が決まったら、ロットは次の式で計算できます。
取引数量(通貨) = 許容損失額 ÷(損切り幅pips × 1通貨あたりの1pipsの価値)
許容損失額を先に決める
許容損失額は「この1回の取引で損切りになったときに失ってもよい金額」です。口座残高の何%とするか、金額で決めるかは人によって異なります。ポジションサイズ計算機では、口座残高に対する割合からでも、円の金額からでも許容リスク額を決められます。
1pipsの価値を確認する
円が決済通貨になる通貨ペア(例として米ドル/円などのクロス円)では、1pips=0.01円なので、1通貨あたりの1pipsの価値は0.01円です。1万通貨なら1pipsの値動きで100円の損益になります。
ユーロ/米ドルのように円以外が決済通貨になる通貨ペアでは、1pipsの価値を円に換算する必要があります。換算の考え方はFXピップ値計算機(pips計算)|1pipsは何円?通貨ペア・取引数量から円換算で確認できます。
端数は切り捨てて許容損失を超えないようにする
計算結果の取引数量は、取引会社・口座の最小取引単位(1通貨、1,000通貨、1万通貨など)に合わせる必要があります。切り上げると許容損失額を超えてしまうため、最小取引単位で切り捨てるのが基本です。ポジションサイズ計算機も、許容リスクを超えないよう切り捨てで表示します。
ATRが変わるとロットはどう変わるか(架空の計算例)
ATRが大きいほど損切り幅が広くなり、同じ許容損失額ならロットは小さくなります。架空の条件で計算して確認してみましょう。
計算例の条件
- 許容損失額:1万円
- 損切り幅:ATRの1.5倍(計算の流れを示すための架空の倍率)
- 通貨ペア:円が決済通貨になる通貨ペア(1通貨あたりの1pipsの価値=0.01円)
- 最小取引単位:1,000通貨(端数は切り捨て)
- スプレッド・スリッページ:計算に含めない
| ATR | 損切り幅(ATR×1.5) | 計算上の取引数量 | 切り捨て後 | 損切り時の損失額 |
|---|---|---|---|---|
| 20pips | 30pips | 10,000円 ÷(30pips × 0.01円)= 約33,333通貨 | 33,000通貨 | 9,900円 |
| 40pips | 60pips | 10,000円 ÷(60pips × 0.01円)= 約16,666通貨 | 16,000通貨 | 9,600円 |
ATRが20pipsから40pipsへ2倍になると、損切り幅も30pipsから60pipsへ広がり、取引数量はおよそ半分になります。どちらの場合も損切り時の損失額は許容損失額の1万円以内に収まっています。数値はすべて架空の例で、実際の取引結果を示すものではありません。
値動きが大きいときにロットが小さくなる理由
損失額は「取引数量 × 損切り幅 × 1pipsの価値」で決まります。許容損失額を一定にしたまま損切り幅が広がれば、掛け算の結果を同じにするために取引数量を減らす必要があります。つまり、ATRを使った方法では、値動きが大きい局面でロットを小さくする調整が計算の中で自然に行われます。
反対に、損切り幅だけをATRに合わせて広げ、ロットを変えなければ、損切りにかかったときの損失額は大きくなります。損切り幅とロットは必ずセットで決めましょう。
ボラティリティ計算機とポジションサイズ計算機を使う順番
使う順番は、ボラティリティ計算機でATRを確認 → 損切り幅を決める → ポジションサイズ計算機でロットを計算です。
具体的な手順
- 取引ツールやチャートから、判断に使う通貨ペアの日足OHLCデータを用意する。
- FXボラティリティ計算機にデータを貼り付け、ATR(pips)を確認する。
- 自分のルールで決めた倍率をATRに掛け、損切り幅(pips)を決める。
- FXポジションサイズ計算機|許容リスクと損切り幅からロット計算に、口座残高・許容リスク額・損切り幅・スプレッド・最小取引単位を入力する。
- 表示された取引数量・実際の損失額・必要証拠金・実効レバレッジを確認し、許容できる範囲かを判断する。
ポジションサイズ計算機では、スプレッドを入力すると損切り幅に足して計算します。スプレッドの分だけ損切り時の損失が大きくなるためです。
計算した内容を記録して見直す
使ったATRの値、倍率、損切り幅、ロット、実際の損益を記録しておくと、倍率やルールを見直すときの材料になります。1回の結果だけで判断せず、一定の件数・期間の記録で確認しましょう。デモ口座で同じ手順を試してから実際の取引に使う方法もあります。
ATRで損切り幅を決めるときの注意点
ATRを使っても、損失を小さくできることや利益が出ることが保証されるわけではありません。計算の前提と限界を理解したうえで使いましょう。
ATRは過去の値動きの平均
注意:ATRは過去一定期間の値動きを平均した値です。経済指標の発表や要人発言などで、ATRを大きく超える値動きが起きることもあります。ATRを基準に決めた損切り幅が「適切な幅」であることや、損切りが有効に機能することを保証するものではありません。
実際の損失は計算より大きくなることがある
損切り注文(逆指値注文)は、相場が急変したときや週明けに価格が飛んだときなどに、指定した価格より不利な価格で約定することがあります。スプレッドが広がる局面もあります。計算上の損失額は「損切り幅どおりに約定した場合」の目安であり、実際の損失がそれを上回る可能性があることを前提にしてください。
ロットが大きくなるときは証拠金とレバレッジも確認する
ATRが小さい時期は損切り幅が狭くなり、計算上のロットが大きくなります。許容損失額の範囲内であっても、必要証拠金や実効レバレッジが高くなりすぎていないかを確認しましょう。ポジションサイズ計算機の結果に表示される必要証拠金と実効レバレッジもあわせて見ることが大切です。
よくある質問(FAQ)
ATRの何倍を損切り幅にすればよいですか?
決まった正解はありません。倍率は自分の取引ルールと、検証期間・条件を明確にした記録をもとに決め、結果を見ながら見直すものです。このページの1.5倍は計算手順を示すための架空の条件です。
ATRが大きいときにロットを小さくするのはなぜですか?
損切り幅が広がっても、損切り時の損失額を許容損失額の範囲に収めるためです。損失額は取引数量と損切り幅の掛け算で決まるため、損切り幅が広がれば取引数量を減らす必要があります。
ボラティリティ計算機とポジションサイズ計算機はどちらを先に使いますか?
先にボラティリティ計算機でATRを確認します。ATRから損切り幅を決め、その損切り幅と許容リスク額をポジションサイズ計算機に入力してロットを計算します。
ドル円以外の通貨ペアでも同じ計算ができますか?
考え方は同じですが、円以外が決済通貨になる通貨ペアでは1pipsの価値を円に換算して計算します。換算を含めた1pipsの価値は、ピップ値計算機で確認できます。
ATRを使えば損切りにかかりにくくなりますか?
そうとは限りません。ATRは過去の平均的な値動きの幅を示すだけで、将来の値動きや損切りにかかるかどうかを予測・保証するものではありません。
まとめ
ATRを使った損切り幅の決め方は、最近の平均的な値動きの幅に合わせて損切り幅を決め、その幅と許容損失額からロットを計算する方法です。値動きが大きいときは損切り幅が広がり、同じ許容損失額ならロットは小さくなります。
- 損切り幅:ATRの一定倍を目安にする。倍率に決まった正解はなく、記録と検証で見直す
- ロット計算:許容損失額 ÷(損切り幅pips × 1pipsの価値)で求め、最小取引単位で切り捨てる
- 使う順番:ボラティリティ計算機でATRを確認し、ポジションサイズ計算機でロットを計算する
- 注意点:ATRは過去の平均で、将来の値動きや損切りの有効性を保証しない。実際の損失は計算より大きくなることがある
まずは架空の数値やデモ口座で、ATRの確認からロット計算までの手順を一度試し、使った数値を記録しておきましょう。






