FXの複利シミュレーションの結果は、「毎回同じ利回りが必ず続く」という前提で計算した数字であり、実際の取引でそのとおりになるものではありません。実際の取引には損失が出る期間や連敗があり、途中で資金が大きく減ると、元の水準へ戻すにはより大きな利回りが必要になります。試算結果は目標や期待値として受け取らず、損失やばらつきを入れた条件でも計算し直し、1回あたりのリスク率を抑えることを優先して確認してください。
このページの計算例は、すべて説明のための架空の条件です。取引コスト(スプレッド)、スワップポイント、税金は含めておらず、将来の成果を示したり保証したりするものではありません。
複利シミュレーションは「毎回同じ利回りが続く」前提の計算
複利シミュレーションは、元本に一定の利回りを掛け続けた場合の計算結果を示すものです。相場の値動きや損失の発生は、計算の前提に入っていません。
複利計算の式と前提
複利の最終金額は、次の式で計算します。
- 最終金額=元本×(1+1回あたりの利回り)^回数
この式は「毎回、同じ利回りで資金が増える」ことを前提にしています。日利・月利・年利のどれで入力しても、途中で損失が出る回がないことが前提になっている点は変わりません。日利・月利・年利の入力方法や年利換算は、FX複利計算シミュレーターで確認できます。
シミュレーションに入っていないもの
一定の利回りで計算した結果には、実際の取引で起こる次のような要素が含まれていません。
- 損失が出る回、損失が続く期間(連敗)
- 1回ごとの利益・損失の大きさのばらつき
- 途中で資金が大きく減る局面(ドローダウン)
- スプレッドなどの取引コスト、スワップポイント、税金
- 相場急変時に想定より不利な価格で決済される可能性
このため、複利シミュレーションの結果は「前提どおりに進んだ場合の計算上の数字」として読み、実際に得られる金額の見込みとしては扱わないことが大切です。
「毎日2%」のような高い利回り前提が現実的でない理由
高い利回りを複利で何度も掛けると、計算上の金額は極端に大きくなります。数字が大きくなるのは計算式の性質によるもので、その利回りが実現できる根拠にはなりません。
回数が増えるほど計算結果が膨らむ仕組み
たとえば、架空の条件として「1回あたり+2%が200回続く」と入力すると、1.02の200乗は約52.5となり、計算上は元本の約52倍になります。これは前提が現実的でない例です。
この計算は、200回のうち1回も損失が出ないことを前提にしています。FX取引には、相場が予想と反対に動いて損失が出るリスクがあり、レバレッジをかけるとその損失も大きくなります。金融先物取引業協会のFX取引に係る主なリスクでも、レバレッジによるリスクや為替変動リスクとして、預けた資金を上回る損失が発生することがある点が説明されています。
高い利回りをうたう投資話への注意
「毎日○%」「必ず増える」のような高い利回りを前提にした話は、複利の計算結果と組み合わせて示されることがあります。金融庁は“オイシイ投資話”にご注意で、「必ず儲かる」などのフレーズでFXや暗号資産などへの投資を勧める事例について注意を呼びかけています。
⚠️ 計算結果を根拠にした勧誘に注意
複利の計算結果は、前提の利回りを入力すればいくらでも大きな数字になります。高い利回りの試算を見せられても、それだけで利益が出る根拠にはなりません。不確実な利益を確実であるかのように示す勧誘は法令で禁止されていることも、金融庁のページで示されています。
損失が入ると複利の結果はどう変わるか
損失が出る回を入れると、同じ率の利益と損失を繰り返しただけでも資金は減っていきます。複利では、率が同じでも掛け算の元になる資金の大きさが毎回変わるためです。
+10%と-10%を交互に繰り返した場合
架空の条件として、元本100万円で「+10%」と「-10%」を交互に繰り返した場合を計算します。
| 回数 | 損益 | 資金 |
|---|---|---|
| 開始時 | - | 1,000,000円 |
| 1回目 | +10% | 1,100,000円 |
| 2回目 | -10% | 990,000円 |
| 10回目(+と-を5回ずつ) | - | 約950,990円 |
1回目の+10%は100万円に対する10%(10万円)ですが、2回目の-10%は110万円に対する10%(11万円)です。+10%と-10%の1組で資金は1.1×0.9=0.99倍になり、これを5組繰り返すと0.99の5乗で約0.951倍になります。平均すると損益0%に見えても、資金は減るという結果です。
一度大きく減ると回復に必要な利回りが大きくなる
資金が途中で大きく減ることをドローダウンと呼びます。減った資金から元の水準へ戻すには、減った率より大きな利回りが必要です。
| 資金の減少率 | 元の水準へ戻すのに必要な利回り |
|---|---|
| -10% | 約+11.1% |
| -20% | +25% |
| -30% | 約+42.9% |
| -50% | +100% |
必要な利回りは「1÷(1-減少率)-1」で計算できます。減少率が大きくなるほど、回復に必要な利回りは急に大きくなります。複利シミュレーションの結果どおりに進まないだけでなく、途中の大きな損失が、その後の資金の伸び方にも長く影響する点に注意が必要です。
同じ平均利回りでも最終金額が変わる理由
毎回の利回りを単純に平均した値が同じでも、損益のばらつきが大きいほど、複利の最終金額は小さくなりやすくなります。複利は足し算ではなく掛け算で資金が変わるためです。
ばらつきが大きいほど最終金額は小さくなりやすい
架空の条件として、元本100万円で12か月運用し、どのケースも月ごとの利回りの単純平均が+2%になるように設定して比較します。
| ケース | 月ごとの損益(架空) | 12か月後の資金 |
|---|---|---|
| A:ばらつきなし | 毎月+2% | 約1,268,242円 |
| B:ばらつき中 | +12%と-8%を交互 | 約1,196,837円 |
| C:ばらつき大 | +22%と-18%を交互 | 約1,002,402円 |
3つのケースは単純平均がどれも+2%ですが、12か月後の資金には差が出ています。ケースCでは、2か月1組で1.22×0.82=1.0004倍にしかならず、12か月後もほぼ元本のままです。複利シミュレーターへ「平均利回り」を一定値として入力すると、実際より大きな結果が表示されやすいことが分かります。
順番で変わるもの・変わらないもの
損益の順番については、条件によって影響が異なります。
- 毎回、資金に対する一定の率で損益が出る計算の場合:掛け算の順番を入れ替えても答えは同じなので、同じ損益率の組み合わせなら最終金額は変わりません。
- 途中の資金の動きは順番で変わる:損失が序盤にまとまって出るか、分散して出るかで、途中の最大の減少幅(ドローダウン)は変わります。
- 入出金がある場合:率を掛ける元の資金が途中で変わるため、順番によって最終金額が変わることがあります。
つまり、最終金額が同じになる計算でも、途中でどこまで資金が減るかは別の問題です。途中で大きく減ると、ロスカットや取引の継続が難しくなる可能性もあるため、最終金額だけで判断しないことが大切です。
複利で運用する場合のリスク率とロットの考え方
複利で運用するときは、利回りの目標から考えるのではなく、1回の取引で資金の何%まで損失を許容するか(リスク率)を先に決めて、そこからロットを逆算する考え方が基本になります。
資金が増えるほど1回の損失額も大きくなる
資金に対して一定の割合で取引量を決める場合、資金が増えれば1回あたりの取引量も増え、損失が出たときの金額も大きくなります。たとえば、リスク率2%の場合、資金100万円なら1回の損失の上限は2万円ですが、資金200万円なら4万円になります。複利で資金を増やす前提は、同時に損失額も大きくなる前提であることを押さえておきましょう。
連敗を入れてリスク率を比較する
架空の条件として、元本100万円で5回続けて損失が出た場合を、リスク率ごとに比較します。毎回、その時点の資金に対してリスク率ぶんの損失が出ると仮定しています。
| 1回あたりのリスク率 | 5連敗後の資金 | 元の水準へ戻すのに必要な利回り |
|---|---|---|
| 2% | 約903,921円 | 約+10.6% |
| 10% | 590,490円 | 約+69.4% |
同じ5連敗でも、リスク率が大きいほど資金の減り方も回復に必要な利回りも大きくなります。複利の試算で大きな結果を見たときほど、連敗を入れたときにどこまで減るかを同じ条件で計算しておくと、結果を過大に受け取りにくくなります。勝率と損益比から見た1回あたりの損益の目安は、FX期待値計算機でも確認できます。
ロットは許容損失と損切り幅から逆算する
リスク率を決めたら、「資金×リスク率」で1回の許容損失額を出し、損切りまでの値幅(pips)と合わせて取引数量を決めます。計算はFXポジションサイズ計算機で行えます。ただし、相場急変時には損切りの注文が想定した価格で約定しないこともあるため、計算上の許容損失額を超える損失が出る可能性がある点も前提にしておきましょう。
複利シミュレーションの結果を使うときの確認手順
複利シミュレーションは、一つの結果を目標にするのではなく、前提を変えて比較するための道具として使うと、結果を過大に受け取りにくくなります。
前提を変えて試算し直す手順
- 一定の利回りで計算した結果を「前提どおりに進んだ場合の数字」として確認する
- 利回りを低くした条件でも計算し、入力した利回りによって結果がどれだけ変わるかを比べる
- 損失が出る回を入れた条件(利益と損失を交互にするなど)で計算し直す
- 連敗を入れた場合に、資金がどこまで減るかをリスク率ごとに確認する
- 減った資金を元に戻すのに必要な利回りを計算し、許容できる範囲かを考える
- 確認した結果から、1回あたりのリスク率とロットを決める
試算結果を読むときのチェックポイント
- 入力した利回りは、損失が出る回を含めても続けられる前提か
- 単純平均の利回りを一定値として入力していないか
- 最終金額だけでなく、途中の資金の減り方も確認したか
- スプレッド、スワップポイント、税金を含めない計算であることを理解しているか
- リスク率を上げると、連敗時の損失も大きくなることを確認したか
損失を抑えるための資金管理の考え方は、FX資金管理の基本もあわせて参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
複利シミュレーションの結果どおりに資金が増えることはありますか?
計算の前提どおりに毎回同じ利回りが続く保証はないため、結果どおりになると考えるのは適切ではありません。実際の取引では損失が出る回や連敗があり、損失の期間を含めると資金が減ることもあります。
平均利回りを入力して計算すれば、実際に近い結果になりますか?
単純平均の利回りを一定値として入力すると、実際より大きな結果になりやすくなります。このページの架空の計算例のように、平均が同じ+2%でも、損益のばらつきが大きいほど12か月後の資金は小さくなりました。
損益の順番を入れ替えると最終金額は変わりますか?
毎回、資金に対する一定の率で損益が出る計算なら、順番を入れ替えても最終金額は変わりません。ただし途中の資金の減り方は順番で変わり、入出金がある場合は、最終金額も変わることがあります。
複利で運用するなら、リスク率はどう決めればよいですか?
先に利回りの目標を決めるのではなく、連敗したときに資金がどこまで減るかを計算し、その減り方を許容できるリスク率を選ぶことが基本です。リスク率が大きいほど、連敗時の減少と回復に必要な利回りが大きくなります。
まとめ
FXの複利シミュレーションは、毎回同じ利回りが続く前提で計算した数字であり、実際の取引の結果を示すものではありません。損失の期間や連敗、ばらつきを入れると、結果は大きく変わります。
- 前提の限界:一定の利回りの計算には、損失、連敗、取引コスト、スワップポイント、税金が含まれていない
- 高い利回りの試算:回数を重ねると計算上の金額が極端に大きくなるが、実現できる根拠にはならない
- 損失の影響:+10%と-10%を繰り返すだけでも資金は減り、大きく減るほど回復に必要な利回りが大きくなる
- ばらつきの影響:同じ平均利回りでも、損益のばらつきが大きいほど最終金額は小さくなりやすい
- リスク率:資金が増えるほど1回の損失額も大きくなるため、連敗時の減り方からリスク率とロットを決める
試算結果は目標としてではなく、前提を変えて比較する道具として使いましょう。まずは損失や連敗を入れた条件で計算し直し、1回あたりのリスク率を抑えたロットになっているかを確認してください。






