FXで年間損益がマイナスになると、「利益が出ていないなら確定申告は関係ない」と考えたくなるかもしれません。しかし、国内FXの損失は、一定の要件のもとで翌年以降に繰り越せる場合があります。
このページでわかること
- 国内FXで損失が出た年に確定申告を検討すべき理由
- FX損失で損益通算できる範囲と、できない範囲
- 3年繰越控除を使うために必要な申告手続きと注意点
こんな方におすすめの記事です
- 国内FXで年間損益がマイナスになり、確定申告すべきか迷っている方
- FXの損失を翌年以降に繰り越せるのか確認したい方
- 給与所得や副業所得とFX損失を相殺できるのか知りたい会社員・副業トレーダーの方
本記事では、FXで損失が出た年の確定申告について、損益通算・3年繰越控除・毎年の申告手続きの基本をわかりやすく整理します。
注:この記事は、国内FXの一般的な税務制度を整理するものです。個別の適用可否は、取引内容・所得状況・申告状況によって変わる場合があります。最終判断は、国税庁の公式情報を確認し、必要に応じて所轄税務署または税理士へ確認してください。
FXで損失が出た年も確定申告を検討すべき理由
FXで利益が出た年は、税金や確定申告を意識しやすいものです。一方で、損失が出た年は「税金を払う利益がないから、何もしなくてよい」と考えがちです。
たしかに、損失が出ている年は、FXの利益に対する納税が発生しないケースもあります。しかし、国内FXでは、一定の要件を満たすことで、損失を翌年以後3年間にわたって繰り越せる場合があります。
この仕組みを使う可能性があるなら、損失が出た年の確定申告が重要になります。
利益がない年でも「損失繰越」を使いたいなら申告が関係する
国税庁のNo.1521「外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」では、平成24年1月1日以後に行われるFXの差金等決済による損益について、差益が出た場合と差損が出た場合の扱いが説明されています。
差益が出た場合は、他の所得と区分して「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税の対象になります。一方、差損が出た場合は、他の「先物取引に係る雑所得等」との損益通算が可能です。
さらに、損益通算をしても引ききれない損失がある場合、一定の要件のもとで翌年以後3年内の各年分の「先物取引に係る雑所得等」から控除できるとされています。
つまり、損失が出た年の確定申告は、「その年に税金を払うため」だけではありません。翌年以降の利益と相殺するための準備として意味を持つ場合があります。
申告しないと翌年以降に損失を使えない可能性がある
損失繰越を使うには、損失が出た年の申告だけでなく、その後の申告も関係します。国税庁のNo.1523「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」では、繰越控除を受けるために必要な手続きが説明されています。
主なポイントは、損失が生じた年分の確定申告書に、申告書付表と計算明細書を添付して提出することです。その後も、連続して申告書付表を添付した確定申告書を提出する必要があります。
注意:「今年は損失だから申告しない」と判断すると、翌年以降に利益が出たとき、その損失を繰越控除に使えない可能性があります。繰越控除を使う予定がある場合は、損失が出た年の申告手続きを確認しておくことが大切です。
本記事は国内FXの一般的な制度に限定します
この記事では、国内FXの一般的な制度を前提に説明します。海外FX、法人取引、暗号資産取引、個別の投資商品との損益通算などは扱いません。
また、税務上の判断は、同じ「FXの損失」でも取引先・取引内容・過去の申告状況によって変わる可能性があります。この記事では基本を整理し、個別判断が必要な部分は公式情報や税務署で確認する前提で進めます。
FX損失で損益通算できる範囲・できない範囲
FXの損失を考えるときに、最も誤解しやすいのが「何と相殺できるのか」です。
国内FXの損失は、給与所得や事業所得と自由に相殺できるわけではありません。損益通算できる範囲は、あくまで「先物取引に係る雑所得等」の範囲です。
| 区分 | FX損失との関係 | 注意点 |
|---|---|---|
| 他の先物取引に係る雑所得等 | 損益通算できる場合がある | 対象範囲は国税庁情報で確認が必要 |
| 給与所得 | 損益通算できない | 会社員の給与とFX損失は自由に相殺できない |
| 事業所得 | 損益通算できない | 副業や事業の所得と同じ枠では扱わない |
| 海外FXなど別扱いになる可能性がある取引 | この記事では対象外 | 税務上の扱いが異なる可能性があるため個別確認が必要 |
通算できるのは「先物取引に係る雑所得等」の範囲
国税庁のNo.1522「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」では、一定の先物取引の差金等決済をした場合、その所得は他の所得と区分して申告分離課税になると説明されています。
ここでいう「先物取引に係る雑所得等」は、国内FXだけを指す言葉ではありません。一定の先物取引・金融商品先物取引等・カバードワラントなど、対象となる差金等決済の範囲が定められています。
国内FXで損失が出ていて、同じ年に他の「先物取引に係る雑所得等」で利益がある場合、その範囲内で損益通算できる可能性があります。
給与所得や事業所得とは自由に相殺できない
会社員の方が特に注意したいのは、FXの損失を給与所得と相殺できない点です。
たとえば、会社員として給与を受け取りながら国内FXで損失が出た場合、そのFX損失を給与所得から差し引いて、給与にかかる税金を直接減らすような扱いはできません。
国税庁No.1521でも、差損が生じた場合について、他の「先物取引に係る雑所得等」との損益通算は可能ですが、「先物取引に係る雑所得等」以外の所得の金額との損益通算はできないと説明されています。
誤解しやすいポイント:「FXで損したから、会社の給料と相殺できる」という理解は誤りです。国内FXの損失は、給与所得や一般的な副業所得と自由に相殺できるものではありません。
CFD・先物などを含む場合は対象範囲の確認が必要
国内FX以外に、CFD、商品先物、金融先物などの取引をしている場合は、それぞれの損益がどの区分に入るのか確認が必要です。
国税庁No.1522では、先物取引に係る雑所得等の課税の特例の対象となる差金等決済の範囲が細かく説明されています。ただし、個別の取引が対象になるかどうかは、取引の種類や取引先によって変わる可能性があります。
複数の金融商品を取引している場合は、自己判断でまとめず、年間取引報告書や各社の報告書を確認し、必要に応じて税務署や税理士へ確認してください。
3年繰越控除の基本と使うための条件
国内FXで損失が出た年に確定申告を検討する大きな理由が、3年繰越控除です。
これは、損益通算をしても引ききれない損失を、翌年以後3年間にわたり繰り越せる制度です。ただし、すべての損失を無条件に自由に使えるわけではありません。
損失は翌年以後3年間繰り越せる場合がある
国税庁No.1523では、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除について、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失がある場合、その損失の金額を翌年以後3年間にわたり繰り越せると説明されています。
繰り越した損失は、その繰り越された年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度として差し引くことができます。
たとえば、国内FXで損失が出た年に必要な手続きをしておき、翌年以降に国内FXなどの対象取引で利益が出た場合、その利益から過去の損失を差し引ける可能性があります。
控除できるのは繰り越した年の利益が限度
繰越控除は、過去の損失を何にでも使える制度ではありません。
控除できるのは、繰り越された年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度とする範囲です。つまり、その年に対象となる利益がなければ、繰り越した損失を実際に差し引く場面はありません。
| 状況 | 繰越損失の使い方 |
|---|---|
| 翌年に国内FXなどの対象取引で利益が出た | 一定要件のもとで、繰り越した損失を利益から差し引ける可能性がある |
| 翌年も対象取引で利益が出なかった | 控除に使う利益がないため、手続き継続の要否を確認する必要がある |
| 給与所得しかない | 給与所得からFX損失を差し引くことはできない |
複数年の損失がある場合は古い年分から差し引く
複数年にわたって損失が発生している場合、どの年の損失から使うのかも重要です。
国税庁No.1523では、先物取引の差金等決済に係る損失の金額が前年以前3年以内の2以上の年分に生じたものである場合、最も古い年分に生じた先物取引の差金等決済に係る損失の金額から順次差し引くと説明されています。
「今年の損失を先に使う」「金額が大きい損失から使う」と自由に選べるわけではないため、複数年の損失がある場合は、過去の申告内容を整理しておく必要があります。
損失繰越で必要になる申告書類と毎年の手続き
損失繰越を使うには、制度を知っているだけでは足りません。必要な書類を添付し、定められた形で申告する必要があります。
特に重要なのは、損失が出た年だけでなく、その後も連続して申告が必要になる点です。
損失が出た年に提出する主な書類
国税庁No.1523では、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を受けるために、損失が生じた年分の所得税について、必要事項を記載した申告書付表と計算明細書を添付した確定申告書を提出する必要があると説明されています。
主な書類は次のとおりです。
- 所得税及び復興特別所得税の確定申告書
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
- 所得税及び復興特別所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
- FX会社が発行する年間損益報告書や取引報告書など、損益を確認するための資料
国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って金額等を入力することで、確定申告書等の作成やe-Taxによる送信ができます。自動計算にも対応しているため、入力内容を確認しながら進めることができます。
翌年以降も連続して申告する必要がある
損失繰越で見落としやすいのが、翌年以降の申告です。
国税庁No.1523では、繰越控除を受けるために、損失が生じた年分の申告に加えて、その後も連続して申告書付表を添付した確定申告書を提出することが必要とされています。
つまり、損失が出た年だけ申告して終わりではありません。翌年に利益が出なかった場合でも、繰越を継続するための申告が必要になる可能性があります。
重要:損失繰越は「損失が出た年に申告すれば自動で3年間使える」という単純な仕組みではありません。繰越控除を使う可能性がある場合は、翌年以降も連続申告が必要になる点を確認してください。
e-Tax・作成コーナーを使う場合も入力内容の確認が必要
国税庁の確定申告書等作成コーナーを使うと、申告書や関連書類の作成を進めやすくなります。ただし、入力する金額や取引区分は自分で確認する必要があります。
特に、FX会社から発行される年間損益報告書の金額、複数口座を使っている場合の合算、他の先物取引に係る雑所得等の有無は、申告前に整理しておきたいポイントです。
書類の名称や画面表示は年度によって変わる可能性があるため、実際に申告する際は、国税庁の最新ページと作成コーナーの案内を確認してください。
損失が少額でも申告するか迷ったときの判断基準
FXの損失が出た年に、必ず迷いやすいのが「損失が少額でも申告する意味があるのか」という点です。
ここで大切なのは、「申告した方が絶対に得」と断定しないことです。損失繰越には制度上のメリットがある一方で、書類準備や翌年以降の継続申告も関係します。
翌年以降に対象所得が生じる可能性で考える
損失繰越は、翌年以降に対象となる所得が生じたときに意味を持ちます。
すでに国内FXなどの対象取引を継続する予定があり、翌年以降に「先物取引に係る雑所得等」が生じる可能性を考慮するなら、損失繰越のために申告を検討する価値があります。
一方で、今後は対象取引を行わない予定で、対象となる所得が生じる見込みがほとんどない場合は、申告の手間と得られる可能性を分けて考える必要があります。
申告の手間と得られる可能性を分けて考える
損失が少額の場合、申告によって将来得られる可能性と、申告準備にかかる手間を比較することになります。
判断するときは、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 判断材料 | 確認すること |
|---|---|
| 損失額 | 繰越控除を使う意味がある程度の金額か |
| 翌年以降の対象所得 | 国内FXなどの対象取引で、翌年以降に所得が生じる可能性を考慮するか |
| 申告の手間 | 必要書類を準備し、翌年以降も申告を継続できるか |
この3つを見ても判断がつかない場合は、自己判断で決めつけず、税務署や税理士に確認するのが安全です。
迷う場合は税務署・税理士へ確認する
税金の記事では、一般的な制度説明と個別の適用判断を分けることが大切です。
この記事で説明しているのは、国内FXの一般的な制度です。実際には、他の所得、過去の申告状況、他の取引の有無、扶養や住民税の状況などによって、確認すべき内容が変わる場合があります。
少額損失で申告すべきか迷う場合、または複数の金融商品を取引している場合は、所轄税務署や税理士に確認してください。
損失が出た年に確認する5ステップ
ここからは、FXで損失が出た年に確認したい流れを5ステップで整理します。
これは「申告すれば必ず得」という意味ではありません。損失が出た後に、制度上の選択肢を落ち着いて確認するための流れです。
- 年間損益報告書で確定損益を確認する
- 損益通算できる取引があるか確認する
- 繰越控除を使う可能性があるか考える
- 必要書類と申告方法を確認する
- 翌年以降の申告継続と資金管理を見直す
STEP1 年間損益報告書で確定損益を確認する
まず確認したいのは、FX会社が発行する年間損益報告書や取引報告書です。
税務上の損益を考えるときは、感覚的な「負けた気がする」「口座残高が減った」ではなく、確定した損益を確認する必要があります。
複数のFX口座を使っている場合は、1社だけで判断せず、各社の年間損益を整理してください。損益の考え方を確認したい場合は、関連記事のFXの損益計算の基本も参考になります。
STEP2 損益通算できる取引があるか確認する
次に、同じ年に他の「先物取引に係る雑所得等」に該当する取引があるかを確認します。
国内FXだけでなく、一定の先物取引や金融商品先物取引等を行っている場合、同じ区分内で損益通算できる可能性があります。ただし、対象範囲は取引内容によって異なるため、国税庁No.1522の対象範囲を確認してください。
一方で、給与所得や一般的な副業所得とは自由に相殺できません。この点を誤解すると、申告内容を誤る原因になります。
STEP3 繰越控除を使う可能性があるか考える
損益通算をしても引ききれない損失がある場合、翌年以後3年間の繰越控除を使う可能性があるか考えます。
ここで見るべきなのは、「翌年以降に対象所得が生じる可能性を考慮するか」「毎年の申告を継続できるか」「必要書類を管理できるか」です。
取引を続けるかどうかは投資判断に関わるため、この記事では推奨しません。制度面では、繰越控除を使う可能性があるなら、損失が出た年の申告が重要になるという整理です。
STEP4 必要書類と申告方法を確認する
繰越控除を使う可能性がある場合は、必要書類を確認します。
- 確定申告書
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
- 申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
- 年間損益報告書や取引報告書
作成方法は、国税庁の確定申告書等作成コーナーや、税務署の案内を確認してください。申告画面や様式は年度によって変わる可能性があるため、古い解説記事だけで判断しないことが大切です。
STEP5 翌年以降の申告継続と資金管理を見直す
損失繰越を使う可能性がある場合、翌年以降も連続して申告する必要があります。損失が出た年だけで終わらない点を、カレンダーや申告メモに残しておくと管理しやすくなります。
また、税務上の処理とは別に、損失が出た原因を資金管理の面から見直すことも大切です。損失を取り戻すために取引量を増やすのではなく、リスクを抑える方向で整理しましょう。
損失後の見直しには、FXをギャンブル化させない資金管理の考え方や、ロットサイズを見直す基本も参考になります。
リスク確認:金融庁は、外国為替証拠金取引について、比較的少額で取引できる反面、差し入れた証拠金以上の多額の損失が生じるおそれのある非常にリスクの高い商品と説明しています。詳しくは金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
FXの損失は給与所得と損益通算できますか?
できません。国内FXの損失は、原則として「先物取引に係る雑所得等」の範囲内での損益通算になります。会社員の給与所得や一般的な事業所得と自由に相殺できるわけではありません。
FXの損失繰越は何年できますか?
一定の要件を満たす場合、翌年以後3年間にわたり繰り越せます。ただし、繰り越した年の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度として差し引く仕組みです。
損失繰越には毎年確定申告が必要ですか?
はい。繰越控除を受けるには、損失が出た年だけでなく、その後も連続して申告書付表を添付した確定申告書を提出する必要があります。
損失が少額でも確定申告した方がいいですか?
翌年以降に対象所得が生じる可能性、損失額、申告の手間によって判断が変わります。「必ず得」とは言えないため、迷う場合は所轄税務署や税理士へ確認してください。
海外FXの損失も同じように繰越できますか?
本記事は国内FXを前提にしています。海外FXは税制上の扱いが異なる可能性があるため、この記事では詳しく扱いません。海外FXを含む場合は、個別に税務署や税理士へ確認してください。
まとめ
この記事では、FXで損失が出た年の確定申告について、損益通算と3年繰越控除の基本を整理しました。
- 国内FXの損失は、一定要件のもとで損益通算・繰越控除の対象になる場合があります。
ただし、対象は「先物取引に係る雑所得等」の範囲であり、給与所得などと自由に相殺できるわけではありません。
- 損失繰越は翌年以後3年間使える場合があります。
繰り越した年の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度として控除する仕組みです。
- 繰越控除を使うには、損失が出た年の申告と、その後の連続申告が重要です。
申告書付表や計算明細書の添付が必要になるため、国税庁の最新情報を確認しましょう。
- 少額損失の場合は、翌年以降の対象所得の可能性・損失額・申告の手間を分けて考えることが大切です。
「必ず得」と決めつけず、自分の状況に合わせて判断してください。
FXで損失が出た年は、取引結果を振り返るだけでなく、税務上の扱いを確認するタイミングでもあります。損失を取り戻す方向に焦らず、まずは年間損益、損益通算の範囲、繰越控除の要件を落ち着いて確認しましょう。
個別の適用可否に迷う場合は、国税庁の公式情報を確認し、必要に応じて所轄税務署または税理士へ相談してください。
※本記事はFXに関する情報共有を目的とし、特定の投資判断を推奨するものではありません。FX取引には為替変動による損失リスクがあり、元本を超える損失が発生する可能性もあります。税務上の取り扱いは個別の状況によって異なる場合があります。投資判断や税務上の判断は、公式情報を確認したうえでご自身の責任で行ってください。








