FXで利益や損失が出たとき、「株の利益と相殺できるのか」「暗号資産の損失とまとめて計算できるのか」と迷う人は少なくありません。
この記事でわかること
- FXの損益通算で、何と相殺できる可能性があるか
- 株式・投資信託・暗号資産・給与所得とFXの扱いの違い
- 損益通算と損失繰越の違い、申告前に確認すべきポイント
こんな方におすすめです
- FX以外に、株式・投資信託・CFD・暗号資産なども取引している方
- FXの損失を、ほかの投資や給与所得と相殺できるのか知りたい方
- 損益通算と損失繰越の違いを、確定申告前に整理したい方
本記事では、FXの損益通算はどこまで可能なのかを、株式・CFD・先物・暗号資産・給与所得との違いを含めて整理します。(専門知識は不要です)
注:本記事は、2026年5月時点で確認できる国税庁等の公開情報をもとにした一般的な解説です。個別の税務判断は、取引内容・口座区分・所得区分・利用している業者により変わる可能性があります。実際の申告では、税務署または税理士に確認してください。
まず結論:FXの損益通算は、原則として同じ「先物取引に係る雑所得等」の範囲で考えます。株式・投資信託・暗号資産・給与所得などとは税務上の区分が異なるため、「投資だから全部まとめて相殺できる」と考えないことが重要です。
FXの損益通算は「同じ年の相殺」と「翌年以降の繰越」を分けて考える
FXの税金を考えるときは、まず「損益通算」と「損失繰越」を分けて理解する必要があります。どちらも損失に関係する制度ですが、意味は同じではありません。
FXの利益・損失は原則「先物取引に係る雑所得等」で扱う
国税庁の外国為替証拠金取引(FX)の課税関係では、平成24年1月1日以後に行われるFXの差金等決済による損益について、他の所得と区分して「先物取引に係る雑所得等」として扱うことが示されています。
つまり、国内FXの利益や損失は、給与所得や通常の雑所得とは同じ箱に入れて考えるのではなく、原則として「先物取引に係る雑所得等」という別の枠で整理します。
この区分を押さえないまま「FXも株も投資だから相殺できるはず」と考えると、申告時に誤解が生じやすくなります。
損益通算は「同じ年の利益と損失の相殺」
損益通算とは、同じ年に発生した利益と損失を一定の範囲で相殺する考え方です。
たとえば、同じ年にA社の国内FX口座で利益が出て、B社の国内FX口座で損失が出た場合、どちらも同じ「先物取引に係る雑所得等」の範囲で整理できる可能性があります。
一方で、同じ年にFXで損失が出て、株式で利益が出た場合は注意が必要です。株式の利益は、FXとは別の税務上の枠で扱われるため、原則としてFXの損失とそのまま相殺することはできません。
損失繰越は「引ききれない損失を翌年以降に回す制度」
損失繰越は、同じ年の損益通算をしても控除しきれない損失を、一定の要件のもとで翌年以後に繰り越す制度です。
国税庁の先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除では、「先物取引に係る雑所得等」の損失について、翌年以後3年間にわたり繰り越せる制度が案内されています。
| 項目 | 意味 | 見るタイミング |
|---|---|---|
| 損益通算 | 同じ年の利益と損失を相殺すること | その年の確定申告 |
| 損失繰越 | 引ききれない損失を翌年以後に繰り越すこと | 翌年以後の確定申告 |
混同しやすいですが、まず同じ年の中で通算できるかを確認し、それでも残った損失がある場合に繰越控除を考える、という順番で整理すると理解しやすくなります。
FXと損益通算できる可能性があるもの
FXと損益通算できる可能性があるかどうかは、「同じ投資商品か」ではなく、「同じ税務上の区分に入るか」で判断します。
国内FX同士は同じ枠で考えやすい
複数の国内FX会社を使っている場合、それぞれの口座で利益と損失が分かれることがあります。
たとえば、A社の国内FXで利益、B社の国内FXで損失が出た場合、どちらも原則として「先物取引に係る雑所得等」の範囲で整理します。そのため、同じ年の損益として合算して考えられる場合があります。
ただし、申告時には各社の年間損益報告書や取引報告書を確認し、実際にどの区分で申告する取引なのかを確認してください。
一定の先物・オプション取引は同じ枠に入る可能性がある
国税庁の先物取引に係る雑所得等の課税の特例では、商品先物取引、金融商品先物取引等、一定の店頭デリバティブ取引、カバードワラントの差金等決済などが対象として説明されています。
そのため、国内FXだけでなく、一定の先物取引やオプション取引などが同じ「先物取引に係る雑所得等」の範囲に入る場合は、損益通算の対象になり得ます。
ただし、商品名が似ていても、すべての取引が同じ扱いになるとは限りません。最終的には、取引会社の年間損益報告書や、国税庁の案内に沿って確認する必要があります。
CFDは商品・取引形態によって確認が必要
CFDは特に迷いやすい対象です。株価指数CFD、商品CFD、個別株CFDなど、名称上は同じ「CFD」でも、取引内容や業者の区分によって確認すべき点が変わります。
国内の金融商品取引業者を通じた一定の店頭デリバティブ取引として扱われる場合、FXと同じ「先物取引に係る雑所得等」の範囲に入る可能性があります。
一方で、「CFDだから必ずFXと通算できる」と断定するのは避けた方が安全です。申告前には、利用している業者の年間損益報告書、税務案内、取引報告書に記載された区分を確認してください。
| 対象 | FXとの損益通算 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 国内FX同士 | 原則、同じ枠で整理しやすい | 各社の年間損益報告書を確認 |
| 一定の先物取引 | できる可能性がある | 先物取引に係る雑所得等に該当するか確認 |
| 一定のオプション取引 | できる可能性がある | 申告分離課税の対象か確認 |
| CFD | 取引内容により確認が必要 | 業者の税務案内・報告書を確認 |
FXと原則損益通算できないもの
FXと混同しやすいものに、株式、投資信託、暗号資産、給与所得、副業収入があります。どれも「お金に関係する収入・損失」ではありますが、税務上は同じ枠で扱われるとは限りません。
株式・投資信託の損益はFXとは別枠
上場株式等の譲渡損失については、国税庁の上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除で、上場株式等の配当所得等との損益通算や、一定要件での繰越控除が案内されています。
ただし、これは株式・投資信託側の枠での話です。国内FXの「先物取引に係る雑所得等」と、上場株式等の譲渡所得等は別の枠で扱われます。
そのため、FXの損失を株式の利益と相殺したり、株式の損失をFXの利益と相殺したりすることは、原則としてできません。
暗号資産は原則「その他の雑所得」でFXとは別に考える
暗号資産も、FXとよく混同されます。どちらも価格変動で利益や損失が出るため、「同じ雑所得なら相殺できるのでは」と考えやすいからです。
国税庁の暗号資産等に関する税務上の取扱いでは、暗号資産を売却または使用することにより生じる利益は、事業所得等に付随する場合を除き、原則として雑所得に区分されると案内されています。
一方、国内FXは「先物取引に係る雑所得等」として、他の所得と区分して申告分離課税で扱われます。名前に「雑所得」という言葉が含まれていても、暗号資産と国内FXを同じ枠で相殺できるとは限りません。
給与所得・副業収入とFX損失は原則相殺できない
会社員の方が特に気にしやすいのが、「FXで損をしたら、給与から引けるのか」という点です。
結論として、国内FXの損失を給与所得から差し引くことは、原則としてできません。国税庁の損益通算でも、申告分離課税の先物取引に係る雑所得等の損失は、先物取引に係る雑所得等以外の所得とは損益通算できないとされています。
副業収入についても、所得区分が異なれば同じように相殺できるとは限りません。FXの損失を「ほかの所得から何でも引ける」と考えないようにしましょう。
| 対象 | FXとの通算可否の目安 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 株式 | 原則できない | 上場株式等の譲渡所得等として別枠 |
| 投資信託 | 原則できない | 株式等の枠で整理されることが多い |
| NISA口座の損失 | できない | 非課税口座内の損失はないものとみなされる |
| 暗号資産 | 原則できない | 国内FXとは課税方式・区分が異なる |
| 給与所得 | 原則できない | 先物取引に係る雑所得等とは別の所得区分 |
| 副業収入 | 原則できない場合が多い | 事業所得・雑所得など、所得区分の確認が必要 |
迷いやすい対象別の判断ポイント
ここからは、特に誤解が起きやすい対象をもう少し具体的に見ていきます。大切なのは、商品名ではなく、税務上どの区分に入るかを確認することです。
CFDは「商品名」ではなく「税務上の区分」で見る
CFDについては、単に「CFD」と呼ばれているだけでは判断できません。
確認したいのは、次のような点です。
- 国内の金融商品取引業者を通じた取引か
- 年間損益報告書にどの区分で記載されているか
- 取引会社の税務案内で、申告分離課税の対象として説明されているか
- 「先物取引に係る雑所得等」の金額として申告する前提か
同じCFDでも、株価指数CFD、商品CFD、個別株CFDなどで中身は異なります。記事やSNSの一般論だけで判断せず、自分が利用している取引会社の書類を確認してください。
海外FXは国内FXと同じ扱いとは限らない
海外FXも、国内FXと同じ感覚で考えると誤解しやすい対象です。
国税庁のFX課税関係ページでは、平成24年1月1日以後の店頭取引であっても、金融商品取引法に規定する店頭デリバティブ取引に該当しない取引や、一定の金融商品取引業者・登録金融機関以外との取引については、申告分離課税ではなく別の取扱いになる旨が案内されています。
そのため、海外FXの損益を国内FXと同じ「先物取引に係る雑所得等」として扱えるとは限りません。本記事では海外FX業者の比較や推奨は行いませんが、税務上は国内FXとは分けて確認することが重要です。
注意:海外FX、海外CFD、暗号資産、分散型金融(DeFi)などを組み合わせている場合、税務上の区分が複雑になりやすくなります。年間損益報告書や取引履歴をそろえたうえで、税務署または税理士に確認してください。
NISA・特定口座・暗号資産は「投資だから同じ」と考えない
NISA口座の損失も、FXとの相殺対象にはなりません。
国税庁のNISA制度では、非課税口座で取得した上場株式等を売却したことにより生じた損失はないものとみなされ、特定口座や一般口座での利益との損益通算や繰越控除ができないと案内されています。
これはFXとの通算以前に、NISA口座内の損失そのものが税務上の損失として扱われないという点が重要です。
また、特定口座の株式や投資信託、暗号資産の損益も、それぞれ税務上の区分が異なります。投資対象を横並びで見ていると同じように感じますが、確定申告では区分ごとに整理する必要があります。
損益通算できない損失はどう扱う?繰越控除と申告書類
FXで損失が出たとき、「その年に通算できないなら終わり」とは限りません。一定の要件を満たす場合、翌年以後の利益と相殺できる可能性があります。
FXの損失は一定要件で3年間繰り越せる
国内FXなどの「先物取引に係る雑所得等」で損失が出た場合、他の同じ区分の利益と損益通算しても引ききれない損失については、一定の要件のもとで翌年以後3年間にわたり繰り越せる可能性があります。
これは「今年の株の利益と相殺する」という意味ではなく、翌年以後の「先物取引に係る雑所得等」の利益から差し引く制度です。
そのため、損失繰越を考える場合も、まずはどの取引が「先物取引に係る雑所得等」に該当するのかを整理しておく必要があります。
繰越控除には確定申告の継続が必要
損失繰越は、自動的に適用されるものではありません。
国税庁の先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除では、繰越控除の適用には確定申告書の提出や明細書の添付が必要であることが案内されています。
損失が出た年だけでなく、翌年以後に繰越控除を受ける年も、必要な申告を続ける点に注意してください。
年間損益報告書と計算明細書を確認する
申告前に最低限確認したい書類は、次のとおりです。
- 各FX会社の年間損益報告書
- CFD・先物・オプション取引の年間取引報告書
- 株式・投資信託の年間取引報告書
- 暗号資産交換業者の年間取引報告書
- 国税庁の「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」
FXの損益額そのものを整理したい場合は、FXの利益損失計算機も参考にできます。ただし、計算機の結果は申告書類そのものではありません。確定申告では、各社の正式な年間損益報告書や国税庁の様式を確認してください。
申告前に確認したいチェックリスト
最後に、FXの損益通算で迷ったときに確認したい流れを整理します。
まず取引ごとに「どの所得区分か」を分ける
最初にやるべきことは、すべての取引を一つの表に並べることです。
| 取引・収入 | 確認する区分 | FXとの関係 |
|---|---|---|
| 国内FX | 先物取引に係る雑所得等 | 同じ枠で整理しやすい |
| 先物・オプション | 先物取引に係る雑所得等に該当するか | 該当すれば通算対象になり得る |
| CFD | 取引形態・業者の税務案内 | 個別確認が必要 |
| 株式・投資信託 | 上場株式等の譲渡所得等 | FXとは原則別枠 |
| 暗号資産 | 原則、雑所得 | 国内FXとは原則別枠 |
| 給与所得 | 給与所得 | FX損失との通算は原則不可 |
この表を作ると、「何となく投資だからまとめる」のではなく、「税務上どの枠に入るのか」で判断しやすくなります。
通算可否は「同じ枠か」「申告分離か」「書類があるか」で確認する
FXとの損益通算で迷ったら、次の3点を確認してください。
- その取引は「先物取引に係る雑所得等」に入るか
- 国内FXと同じ申告分離課税の枠で申告する取引か
- 年間損益報告書や取引会社の税務案内で、申告区分を確認できるか
この3点があいまいな場合、自己判断でFXと合算するのは避けた方が安全です。
また、FXで大きな損失が出た場合は、税務上の整理だけでなく、取引前の資金管理も見直すきっかけになります。損失許容額を考えるときは、リスクリワード計算や、証拠金・レバレッジ管理の基礎も確認しておくと、次回以降の取引リスクを整理しやすくなります。
迷う場合は税務署・税理士に確認する
損益通算は、見た目以上に個別判断が入りやすいテーマです。
特に、次のようなケースでは慎重に確認してください。
- 国内FXと海外FXの両方を使っている
- CFDや先物、オプション取引も行っている
- 暗号資産や分散型金融(DeFi)関連取引もある
- 副業収入や事業所得がある
- 前年以前の損失繰越がある
最終的な判断では、年間損益報告書、取引履歴、前年の申告書類をそろえたうえで、税務署または税理士に確認してください。
よくある質問(FAQ)
FXの損失は株の利益と損益通算できますか?
原則としてできません。株式は上場株式等の譲渡所得等、国内FXは先物取引に係る雑所得等として扱われるため、税務上は別の枠で考えます。
FXの利益と暗号資産の損失は相殺できますか?
原則として、国内FXの利益と暗号資産の損失は同じ枠では考えません。暗号資産は原則として雑所得、国内FXは申告分離課税の先物取引に係る雑所得等として扱われます。
CFDはFXと損益通算できますか?
一定の店頭デリバティブ取引等として同じ「先物取引に係る雑所得等」の範囲に入る場合は、通算対象になり得ます。ただし、商品や取引会社により確認が必要です。
FXの損失を給与所得から差し引けますか?
原則としてできません。給与所得は、国内FXの先物取引に係る雑所得等とは別の所得区分です。
損益通算できなかったFX損失は翌年に繰り越せますか?
一定の要件を満たして確定申告を行えば、翌年以後3年間の繰越控除を受けられる可能性があります。損失が出た年と、繰越控除を受ける年の申告手続きに注意してください。
まとめ
この記事では、FXの損益通算はどこまで可能なのかを、株式・CFD・先物・暗号資産・給与所得との違いを含めて整理しました。
- FXの損益通算は、原則として「先物取引に係る雑所得等」の範囲で考える
国内FX同士や、一定の先物・オプション・CFDなどは、同じ枠に入るかどうかを確認します。
- 株式・投資信託・暗号資産・給与所得とは原則別枠
同じ投資でも、税務上の区分が違えば一括で相殺できるとは限りません。
- CFDや海外FXは名称だけで判断しない
取引形態、業者の区分、年間損益報告書、税務案内を確認することが大切です。
- 損益通算と損失繰越は別の制度
同じ年の相殺が損益通算、翌年以後に回す制度が損失繰越です。
- 迷う場合は公的情報と書類をそろえて確認する
年間損益報告書や前年の申告書類をそろえたうえで、税務署または税理士に確認してください。
FXの損益通算で大切なのは、「投資商品名」ではなく「税務上の区分」で見ることです。株・暗号資産・給与所得とまとめて考えるのではなく、まずは自分の取引を区分ごとに整理してみてください。
※本記事はFXおよび税務に関する一般的な情報共有を目的とし、特定の投資判断や税務判断を推奨・保証するものではありません。FX取引には為替変動による損失リスクがあり、元本を超える損失が発生する可能性もあります。税務上の取扱いは取引内容・口座区分・所得状況により異なる場合があります。実際の申告や判断は、国税庁の最新情報を確認し、必要に応じて税務署または税理士にご相談ください。








